理学系研究科の院試が終わった。出来としては良くないとしか言えないが、やるだけのことはやったので後悔はもうしていない。(これは今日見た映画の影響である。すぐに影響されるちょろい男である。下の方にネタバレ込みの感想を書く。)院試の振り返りをここにしておく。

 

数学は完答できたので、計算間違いがあったとしても9割くらいは取れていると思う。計算間違いが例えあったとしても、ただ院試の点が低くなるだけなので、数学には満足している。

 

英語はやはり点数が読めないが、駒場に比べて音質がクリアだった気がするので、リスニングは8割は取れているかなと思う。その代わり文法と長文が難しく感じたので、これも8割くらいを見積もっておくと、英語は全体で8割くらいかなぁ。これは少なく見積もり過ぎな気がするが、自分の実力は過小評価しておいた方が何事も良いと思う。

 

問題の物理である。

量子は最後まで解いたので、9割くらいはもらえるんじゃないかと思う。断熱操作には慣れていなくて面食らったが、落ち着けば解けた(と信じている)。

統計は量子論での取り扱いが全く自信がなく、ボロボロなんじゃないかと思う。試験時間中ずっと低温では量子効果が出ないはずだと、意味不明な妄想に陥ってドツボにはまってしまった。普段からものをしっかり考えずに教科書に書いてあることを目で流しているだけなので、謎の思い込みをしてしまいがちである。本当に直さないといけない悪癖である。自信がかけらもないので7割くらいだと想定しておく。

電磁気は電磁波の放射の計算が全く分からなかった。電磁波の放射ができなければ試験に落ちるなら僕の方から願い下げだ、くらいの傲慢なことを本気で思っていたが、僕の尊敬する同期はその場でしっかり考えて答えを出せたようなので、彼に比べると(比べるまでもないのだが)全く物理ができないんだなぁと人生で100回目くらいに思い知らされた。電磁気も7割くらいを想定しておく。

実験問題はミューオンに関する問題を選択した。相対論とBethe-Blochにつられて選択してしまったが、その相対論の計算に自信がないのだから、笑い種である。噂だとX線回折は簡単だったらしく、裏目に出てしまった。しかし、これは仕方がないことである。僕が物理を真面目に勉強し始めたのは、誇張なしで駒場口述試験が終わった8月頭からであり、3年次の僕は実験に全く興味を持たず、その場のノリで済ませてきた。そんな僕がまともに対策できるのは、僕が多少ものを知っている分野に近い素粒子実験のみである。3年次に怠けてきたツケが院試という大事な大事な場面で回ってきたのは致し方ないことである。実験問題には最初から期待していなかったし、順当な結果と言える。実験問題は6割くらいを想定しておく。

 

以上の僕の点数を総合すると600点満点中460点である。八割弱である。これは落ちても何も文句が言えないし、文句を言うつもりもない。僕という人間は失敗体験をしないとすぐに調子に乗ってしまうので、ここで挫折しておくのも悪くないかもしれない。

 

こんな感じで非常にブルーな気持ちで、冒頭で述べたように最近公開された『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を学科の友人たちと日本橋に見に行った。正直、ヒロインの戦場ヶ原ひたぎ及川なずなの外見が好きだったのと、世間で酷評されているらしいストーリー目当ての怖いもの見たさで見に行ったところがあるが、まさかの最高の映画でとても感動してしまった。テーマは『今自分が生きている世界だけが、自分の世界だ』ということかな、と僕は思う。人間は常に何かを選択し続けなければいけないが、あのときの選択肢は間違っていて違う選択肢を選ぶべきだったなぁ、もしもああしていたら今はもう少しマシになっていたのになぁ、とか思いがちである。(cf.導波管ではなく電磁波の放射を勉強しておけば良かったなぁ。)ただ人間は過去に戻れないのだから、過去は振り返らずこれからどうするべきかを考えるべきだ、という月並みな言説をよく聞く。(思うと僕の好きな天元突破グレンラガンもこの主題を扱っていた。)この映画も言ってしまえば90分くらいかけて、そのことを伝えているだけなのだが、ストーリーが良く説得力がある。主人公はもしも玉が作った世界(表現する適切な言葉が見つかっていない。パラレルワールドが割と近いと思う。)で異なる選択肢を選んだ自分の人生、世界を体験することになるが、結局は一番はじめの正史に戻ることになる。最初はタイムリープものかと思ったけど、最終的には歴史自体は一切変わらなかったので、一線を画している。歴史は変わらなかったが、主人公はもしも玉の世界でなずなと過ごした記憶を持ったまま(と僕は信じている。)なので、これからの未来をどう選択して、その結果なずなと再会できるかどうかは主人公次第だよ、という切なくも救いのあるエンドだと僕は解釈している。普通は過去のある瞬間に戻って異なる選択をすることなどできないが、主人公は運よくその機会に恵まれた。ただ僕達は運悪くそのようなチャンスを得ることはこの先決してないので、それが大きいものであれ小さいものであれ、人生で次々現れる選択肢は、必死になってできる限り最良だと自分が思えるものを掴み取るべきだ、というメッセージを主人公の物語から僕は受け取った。

作中の登場人物で一番好きなのは、主人公の親友である祐介だ。正史は、祐介が主人公に50m競泳で勝ち、なずなに夏祭りに誘われる、だが、祐介は主人公らと夏祭りに行くことを選び、なずなの誘いをすっぽかす。祐介は本当はなずなのことが好きなのだが、中学生にありがちだと思うが色恋沙汰を過剰に恥ずかしがり、男友達との友情を選んでしまう。しかし、もしも玉の世界で主人公が祐介ら男友達との約束をすっぽかし、なずなと逃避行することを選んだのを見た祐介は、正史とは異なりなずなへの恋愛感情を隠そうともせず主人公に掴みかかる。周囲の目が気になって、恋愛感情を素直に表に出せない中学生くらいの男子(少なくとも僕はそうだった)の象徴である祐介のこの変化は見ていて感心した。よく中学生男子の心情をここまで表現できるものだと思う。自分からは男友達同士の付き合いというぬるま湯から決して出ようとはしないが、同じグループの誰かが抜け駆けした途端にそれまで躊躇させていた枷が外れ、半ば逆切れ気味に感情を爆発させる。そんな祐介も最後のもしも玉が爆発四散するシーンで、なずなと夏祭りの屋台を巡っているもしも玉の世界に感情を揺さぶられていたので、彼もまた主人公らではなくなずなと夏祭りに行くことを選ぶべきだったと、これから後悔するであろうことが想像され切なくなった。折角向けられたなずなからの好意を無下にした正史の祐介がなずなの転校を知った後、何を思うのか?そのことも想像すると面白い。

主人公となずなが再会してエンドロールという安直なエンドでなかったことが、余韻に浸る時間をたっぷりくれたのでとても良かった。作画も綺麗だったし映画館でもう一度見てもいいかもしれない。